我が子を保育園に預けるということ

保育の質とは

最近、よく聞きませんか?「保育の質」というキーワード。

「保育の質」を維持・向上するためにはどうしたらいいか。

厚生労働省の有識者会議で議論されていることは新聞等を通じて読まれたことがあるかと思いますが、そこに明確な答えは示されていません。

我が子を預ける保育園の「質」、気になりませんか?

自身が働く保育園の「質」、気になりますよね。

 

「保育の質ってなんでしょう?」

「質を向上させるってどういうことでしょう?」

とこちゃんの職員会議で、保育士のみんなに問うてみました。

結果、明確な回答は出ず・・・。

それもそのはずです。

「保育の質」なんて、とても抽象的であり壮大な表現です。大雑把な表現とも言えます。

しかし、大雑把であっても具体性に欠けた表現であっても、とにかく待機児童解消のために

保育園の数だけがどんどん増えている昨今、国をあげてこのように指標を示す必要があるということなのでしょう。

「預かればいい」「待機児童が減ればいい」=保育の質はぐんぐん低下、本末転倒・・なんていう事態も想定される時代に突入しているということではないでしょうか。

ですから、我々保育士、保育関係者はそのことをしっかり受け止め、「保育の質」の維持・向上のために具体的に何ができるか、何をすべきかを多面的に考え、実行していかなければなりません。

 

質の向上のためのひとつの策として、保育士の処遇が見直され、少しずつ改善されてきました。これは、保育士にとっても保育運営者にとっても大変ありがたいことです。

一方で、「保育の仕事は大変なのだからあたりまえ」「これまでが安すぎたんだ」と言う人もいますが、私はそれは違うと思います。保育士は、この処遇改善策にあぐらをかいてはなりません。大事な国の予算で改善されるということは、それだけ「保育の専門性に期待をしている」「保育士が学びを深めるため、資質向上につなげるための予算」であると捉えています。

 

では具体的に、我々保育士はどんなことに取り組んでいけばよいのでしょうか。

まずは保育士が分野別研修を通してキャリアアップを目指せるシステムを国が提示しています。実際にとこちゃんの職員も昨年度からこの研修に参加し、「保育士等キャリアアップ研修修了証」を取得しています。

このような園外研修はもちろんですが、並行してとこちゃんでは園内で取り組む研修も昨年度から大幅な見直しを図っています。

保育経験、子育て経験に基づく保育という側面を否定はしませんが、時代に即した専門的知識を伴った「経験に頼らない保育」を目指すため、研修は必須であると考えます。

経験と知識、この両者が備わることで、保育は専門性の連続であるということを保育士自身が実感し、それを社会に評価していただくことが重要だと思います。

 

たとえば、看護と比較するならば、注射や投薬は誰でもできるものではありません。

一方、おむつ替え、調乳、絵本の読み聞かせ、手遊び・・・おや?私にもできる?

特別な専門性を持ち合わせなくても子育て経験でもあれば誰でもできそうであると思われがちなのが保育の特徴です。

つい昨年も「保育士は誰でもできる仕事」とホリエモンがつぶやいたことにより物議を醸すことがありましたね。

ではなぜホリエモンは、「保育は誰でもできる仕事だから給料が低い」と感じたのでしょうか。

私はこう思いました。

実はその要因を生み出したのは、我々保育士に責任の一端があったのではないかと。

保育士の専門性はどんなところにあるのか、ママのおむつ替えとはどう違うのか、

子どもたちが心身ともに満たされ、より豊かに生きていくことを支えるとはどういうことなのか。積極的に社会へ伝えていかなければならなかったのです。

まだ遅くはない。

今こそ、保育の専門性を保育士自らが言葉に発し、明確に示していかなければならないのです。

 

保育士という職業を客観的・多面的に捉えて改善していくと考えると、エプロンにだぼだぼのジャージ姿、単純にこのスタイル自体に問題はないか、

子どもに話しかけるような話し方で大人とも会話をしていたのではないか、

社会の第一線で働く保護者と対等に話ができるまでの知識・教養を身につけるための努力はしていたか、等の問題意識を自ら発見し、改善していきましょう。

 

これまでの保育士は、あくまでも個人的見解ですが、このような人が多かったように思います。→「社会の皆さん、保育士って大変なの、書類多いの、残業多いの、保護者のクレーマーも多いの、なのに給料安いの、職場は年功序列で何も言えないの、こんなに頑張ってる私に気づいて!給料上げて!」

あー、古い。大変なことを羅列して社会に求めて待ってちゃダメダメ。

とこちゃんの保育士にはよくこう伝えています。

「待つ身の女はもう古い!自分の人生、自分で展開していきなさい」

「チャンスはつかむものじゃない、自らの手でつくるもの!」

誰か(社会)に何か(評価・処遇改善)を求める前に、自分から何かを始めること、これが今の保育士に求められていることのひとつであると指導しています。

最善の利益のために、今度はどんな分野を学ぼうか、どんな技術を習得しようか

残業しないで効率的に仕事を進めるためにはどんな工夫が必要か、保護者から一定のご協力をいただくにはどのようなアプローチが必要か、どのように環境を整えていけばよいか、本当の意味での保護者支援とは何か、マネジメント力を高めるにはどんな学びが必要か、

一般社会ではどんな課題があり、保護者はどんな困難に直面しているのか。

我がクラスを、我が保育園をあらゆる角度から捉え、改善・向上させていく。

保育は「誰でもできる仕事」ではないということを、保育士たちが自らの姿をもって社会に示していかなければならないと自覚することが大切です。

 

以上、「保育の質」を捉えるため、まずは「保育士のキャリアアップ」「保育士の意識改善」であることをお話しました。

続いて、「保育内容の向上」についてお話します。

最近は「食育」という言葉をよく聞くようになったと思いますが、これこそまさに「保育内容の向上」であると感じています。

 

我々保育士の拠り所とも言える「保育所保育指針※」でも「食育の推進」という項目があります。そこには「保育所における食育は、健康な生活の基本としての『食を営む力』の育成に向け、その基礎を培うことを目標とすること」と示されています。

(※保育所保育指針とは、保育所保育の基本となる考え方や保育のねらい及び内容など保育の実施に関わる事項と、これに関連する運営に関する事項について定めたもの)

「食」に関する興味・関心を広げるための活動や取り組みをしている保育園がとても増えて

いますが、とこちゃんも同様に『食を営む力』の育成が、子どもたちの生涯にわたるしあわ

せになりうるのではないかと信じ、あらゆる角度から取り組みをしています。

植物の栽培・観察・収穫、クッキング、オリジナル献立作成、有機米の提供、バイキング

給食・食にまつわる教材の導入(絵本・紙芝居・エプロンシアター・さかな畑等)・・・

ひいては保育園名まで食べ物の名前に改名しちゃいました!

福を巻き込む~「とこちゃん のりまき保育園」

福を丸める~ 「とこちゃん おだんご保育園」

良い縁を結ぶ~「とこちゃん おむすび保育園」

のりまき・おだんご・おむすびは子どもたちにとって身近な食べ物であり、遊びの中でもよ

く登場する単語なので親しみがあります。(タオルをのりまきにしてしまう、砂場でおだん

ごをつくる、大好きな絵本♪おむすびころりんすっとんとん♪など)

また、巻物はお正月の昆布巻き・伊達巻、節分の恵方巻と縁起が良い食べ物であること。

おだんごは収穫への感謝を込めてつくる月見だんご、お花見で食する自然の恵みを示す3

色だんごとこちらもしあわせな食べ物です。

とこちゃんでは毎日「おだんごさ~ん、のりまきさ~ん、おむすびさ~ん」と呼び合い、

間違いなく子どもたちの「食」への興味関心は高まっていると思います。

食育ひとつとっても、考えること・できること・やってみたいことがたくさんあります。

保育所保育指針を指標とし、我々保育士は「保育内容の向上」をあらゆる角度から追求して

いくことが、いわゆる「質」の向上につながるのでえはないかと考えています。