よしこ先生のここだけの話
文字はいつから教えたらいいの?
以前、小学校入学を控えたお母さんに「先生、とこちゃんでも文字を教えてください」と頼まれました。
「はい、〇〇ちゃんが『先生、教えて』って言ってきたら教えますね」と答えました。
お母さんは、そうではなくでワークのような教材を活用し、文字のおけいこの時間を設けてほしいとのご要望でした。
幼稚園では年長さんになると、どこでもおけいこの時間があるようです。
(私がかつて勤めていた幼稚園でもありました。)
とこちゃんでは、文字のおけいこをしたことがいまだかつて一度もありません。
鉛筆や消しゴム、紙はふんだんに用意しています。
「おてがみ書きたい」「お絵描きしたい」という子のためであって、おけいこのためではありません。
「先生、これなんて読むの?」「あ、ってどう書くの?」
こう聞かれたら喜んで教えます。じゃあついでに「い」も教えるかといえば教えません。
まだ聞かれていないので。
それに、教えるまでもなく、子どもたちは日々の生活の中で自ら学んでいます。
保育室を見渡すと文字や数字がたくさんあります。
個人の引き出し、タオルかけ、ひらがなの積み木、絵本、時計、温度計・・・
「〇〇ちゃんの【ゆ】」
「1と8で・・18」
一歩外に出れば、アルファベットも漢字もあります。
「maruetsu」~へぇ、これってマルエツって読むんだ!
「保育園」~へぇ、これってほいくえんって読むんだ!
見て聞いて、メモもとらないのに、教えてもいないのに、どんどん覚えていきます。
子どもにとって、環境すべてが教材なのです。
教えないから、知りたくなるのです。
(テレビゲーム等、大人が積極的に教えないことをあえて知りたくなるのが子どもですよね。)
このように、日々の暮らしのなかで、能動的に文字や数のおけいこをしている子どもたちに
なぜ、あえて「おけいこ」を教えなければならないのかが疑問です。
入学したときに文字が書けないと困るから?
学校で座っていられないと困るから?
たしかに、そう言われると私たち保育士は学校に付き添っていってあげられるわけでなし
いい加減なことは言えません。かたくなに「教えない」と言っているわけにもいきません。
いずれはとこちゃんでも文字を教えなければならない時代がくるかな、なんて内心思っていました。
でもね、とこちゃんっこたちは、「よしこ先生、その必要はないよ」って教えてくれました。
なぜなら、年中さん・年長さんになると、どの子も文字への関心が自然に高まってくるからです。
自ら「お勉強したい」と紙と鉛筆を出して積極的に文字を書いたり数字を書いたりしています。
わからない文字があると友だちに聞いたり先生に聞いたり絵本で確認したりしています。
机に向かわない子も、絵本を上手に朗読したり、かるたとりをしたり、先生がひらがなで書いて貼った歌詞を見ながら大合唱していたり♪
まさに、遊びながらお勉強をしているとこちゃんっこです。
うん、これなら大丈夫。あえてお勉強の時間を設けなくても学校で困ることはないでしょう。
自信をもってそう思えるようになりました。
タイトルの、文字はいつから教えたらいいか。
よしこ先生の答えは、ズバリ「小学校から」ということになります。
ただし、文字や数字、アルファベット、漢字等、「これなんて読むんだろう?」と興味関心が高まる環境を整えることは大切だと思います。
お部屋やトイレの壁に文字が書いてあるポスターやカレンダー、地図などを貼る、家族写真を飾るときに「おとうさん」「おかあさん」「おにいちゃん」など、あえて文字を加えてから飾る、買い物に行く前に買い出しメモを親子で書くなど、文字を環境に取り入れる工夫を親子で楽しむことは、2~3歳の頃から始めても良いと思います。
ちなみに、日々の生活環境にないことはあえて設定して教える必要があると思います。
たとえば鍵盤ハーモニカや水泳、ダンス等は、小学校の授業でも取り組むことなので、幼児期からあえて設定して楽しみながら教わる経験をしておくのも良いかと感じています。