我が子を保育園に預けるということ
慣らし保育
どの保育園にも慣らし保育があります。
その名の通り、新しい環境に慣れていくための時間です。
初日は2時間、2日目は3時間で給食デビュー、3日目は5時間でお昼寝デビュー、4日目は8時間でおやつデビュー、5日目はフルタイムで過ごしてみましょう・・・
こんなペースでいくと5日間で慣らし保育は完了ということになりますが、なかなか思うようには進みません。
個人差が大きいのです。
すぐに新しい環境に慣れて慣らし保育が3日間で完了するお子さんもまれにいます。
逆に泣き続けているため水分も摂れず、なかなか園で過ごす時間を増やせず、慣らし保育が10日以上かかるお子さんもいます。
昨日まで親と毎日一緒に過ごしていた子ども(赤ちゃん)が、ある日突然知らない場所で知らない大人や知らない子どもたちと過ごすのです。
見慣れないおもちゃにつられて楽しく遊んでいる間にママがいないことに気づき大泣きになる子もいれば
何かを察してママにしがみついて離れずに最終的には無理に引き離して泣きじゃくる子もいます。
初日はまったく泣かないで過ごしたのに翌日は家を出るときから泣いて嫌がる子もいますし
3か月以上も泣き続けたお子さんもいます。
先生の抱っこを拒否する子もいれば先生にしがみつくもいますし
泣きながらも周りの様子を見ている子もいれば目を閉じて周りを見ないようにしている子もいます。
泣く理由は様々なのでしょう。
親から離れること自体に恐怖心がある子
新しい場所・人が苦手な子
見通しがたたないことが嫌な子
上着を脱がされたり上履きを履かされたりすることが苦手な子
子どもの泣き声が嫌いな子
私たち保育士は一人ひとりの泣きたい気もちを受けとめて、言葉にならない言葉を聞くため寄り添います。
どんな遊びやどんな抱き方が好きなのかなとやりとりをしてみます。
ここは楽しいところだと感じてもらいたいなと関わってみます。
こうして数日間、お子さんたちに寄り添ってみると、泣く理由が少しずつ見えてきます。
そして、なぜ泣いているのかがわかってきたらそこをポイントとして、その不安ポイントを少しでも和らげるように工夫したり親御さんと相談したりして様子を見守ります。
親御さんにとってはこの慣らし保育期間は本当にご心配で、いてもたってもいられないのではないでしょうか。
その期間はまだお仕事が始まっていない方も多いので、いったん自宅に帰ったもののずっとウロウロ&オロオロしてましたという声を聞くこともよくあります。
お子さんと一緒に涙を流すお母さんもいます。
帰宅後はママにべったり。後追いがすごいです。そんな姿を見るとなおさら心配になりますよね。
そんな中、慣らし保育2日目。この日が山場です。
昨日、ここでママと離れたことを体験している子どもたちは、保育園の入り口を見ただけでそれはそれは大泣きになります。「またここかーー!!」
子どもにとっては信じられない事実ですよね。
昨日はわけもわからず過ごしたけれど、こんなことめったにないだろうと思いきや・・よっ翌日も!!
2日目は試練の日。
でも私たち保育士は慣らし保育も慣れています。今目の前で泣いている子がいずれ必ず泣き止む日がくることも経験上わかっています。
先生たちは落ち着いてお子さんに寄り添い、向き合い、かかわっていきます。
おんぶが好きだとわかれば納得するまでおんぶをし
抱っこが好きだとわかれば納得するまで抱っこをします。
Y先生「慣らし保育期間は、いつも以上に姿勢や視線を低くして怖がらせないようにしています。」
M先生「できるだけ安心できることをしてあげたいので、抱っこをいやがるお子さんにはそばに寄り添い、徐々に距離を近づけていこうと思っています。」
親御さんにとっては
見たことがないくらい泣きじゃくる我が子を見たら・・2日目にして迷いがでてくることでしょう。
なのに、先生はあっさり「大丈夫ですよお母さん」と早く外に出てくださいと言わんばかりの空気感。
いったん外に出たけれど、やっぱり気になってこっそりのぞいたり耳を澄ませたり。
ママやパパの姿が見えているうちは大泣きしているお子さんが、親の姿が見えなくなると泣き止む・・ということはまれではありません。実はほとんどのお子さんがそうです。
子どもは賢いですよね。
ママが見えなければママに代わって汚れたオムツを交換してくれる人を、ママに代わってごはんを食べさせてくれる人を、冷静に見極めています。
0歳児でも1歳児でも。まだそんなことはわからないと思うかもしれませんが、オムツ交換をしながら子どもたちは先生のことをじっと見つめています。
慣らし保育中ずっと泣いていて、10日間かけてなんとか慣らしを完了させ、ママのお仕事が始まった瞬間に泣かなくなるということもよくあります。
ママはおうちにいるのになんで私はここに預けられるのか?
1歳児ですが、慣らし期間はそう感じていたのかもしれません。
ママがスーツ姿になり、明らかに時間を気にしながら「行ってきます!」と保育園を出かける後ろ姿を見て子どもなりに理解し、心が決まるのだと思います。
一方、なかなか保育園に慣れずにあまりにも泣き続けて親子ともに参ってしまい、仕事も保育園も断念したというケースもあります。
そういうこともあるでしょう。
何かしらの理由もあるはずです。タイミングの問題、健康事情などもあったのでしょう。
それはそれで親子のひとつの思い出としておさめて良いと思います。
「慣らし保育」は子どものためがもちろんですが、大人のため(保護者・保育士)という要素も大きいのです。
子どもも大人も、慌てずに少しずつ保育園との先生との距離を近づけていけばよいので、早く慣れようと思わず
また、なかなか慣れない子どもや自分を責めず、ただ、どうしてもつらかったら無理しないで、いろいろな人に相談してみてくださいね。
慣らし保育も終えて、すっかりペースができてきた1~2か月後。
ある日突然、登園をしぶったり泣いたりするようになるお子さんが多くいます。
それにもいろいろな理由があると思います。
がんばるのに疲れちゃった
もっとママにあまえたーい
思い通りにならないよー
実は、この時期が一番大切です。
大人のペースと子どものペースは違います。
新生活の波にのってきた大人にとったら、なぜ??と思うかもしれませんが、親の姿をよく見ている子どもにとってはこの時期が一番さみしいのです。
慣らし保育の頃はボクが泣いたらママも泣いてくれてたのに・・。
保育園から帰ってきたら「がんばったね」っていっぱい抱きしめてくれてたのに・・。
親にとってはすでに保育園も生活の一部になっていて、あたりまえになっていて。
でも子どもはそんな親の心を見抜いてママを困らせて気を惹こうとしたり泣いてあまえてみたりする。
この時期にしっかりと子どもと向き合いましょう。
落ち着いてきたからこそ保育園に行く目的をゆっくり伝えてみたり
日々の成長を認めたり、意識的にスキンシップをとったりしてください。
保育園にも慣れてきたからと断乳したりトイレトレーニングをがんばらせたりは、この時期だけは避けていただきたいと思います。
私の経験上、本当の意味で慣らし保育を完了するのは入園から半年後程度と捉えています。
大人でも有給休暇が発生するのは入社半年後です。
実は大人も子どもも新たな環境に慣れるには半年はかかるということです。
慣らし保育は焦らずゆっくりと
慣れてきた1~2か月後が一番大事
子どもは大人をよく見ている
この3つが今回の話のポイントです。
次回は 「徹底して子どもの側にたつ」について書きます。